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症状の主観

−     生の感覚     −


◆ 私が体験した発作時の症状 ◆
    私の場合、発作を発症した時の最も顕著な症状は、
動悸
です。 それに続いて、
意識が遠のく
ような感覚が起こり、
左胸の痛み
手のしびれ
死の恐怖
手足からの発汗
全身の震え
が起こり、こうした状態が20分ほど続いた後、次第におさまってきます。 

    もっとも恐ろしかったのは、死の恐怖です。  この感覚は、意識が遠のくところから始まり、ひとたび意識を失ったら、 もう二度と戻ってこれないのではないかという感覚に陥るのです。 貧血などで意識が遠くなっていくのとは 明らかに違っていて、自分の頭のすぐそこに死の入口がポッカリと口をあけて待っているようで、 そこに吸い込まれていくような恐怖です。

    中度の発作の場合は、動悸に続けて、上記の症状のうちのいくつかの組み合わせで発生します。  ここで、薬を服用したり、「ただの発作だ。 静かにやり過ごそう。」 などという暗示を自分にかけたりすると、
吐き気
うつ状態
が、長時間にわたってダラダラと続きます。  こうした結果、セロトニンの量のバランスがかえって悪くなったりすると、
激しいうつ状態
離人感
を呈することがあります。


◆ 生の感覚 ◆
    離人感が出てくるとやっかいです。 回復までの間、かなりつらい時間を過ごさなければなりません。

    離人感はひどくなると、 「空中から自分自身を見ているような感覚」 になると言われていますが、 私の場合はそこまでいかず、 「自分が自分でない気がする」 という程度です。 しかしこれがなかなかつらい。

    はじめは、普段見ている景色 (職場や通勤風景) に、白いベールがかかったように見えてきます。  実際に白んで見えるのではなく、視力が弱まったわけでもなく、知覚しようとなんとなく努力しないとハッキリと認識できないような状態になります。  意志的努力なしには何事もはっきりしない感じになります。 眠いわけではありません。 意識がスッ飛んでしまうのかというと、そうでもなく、 計算や、パソコンのキーパンチはいつも通りできるし、歩いたり喋ったりもできます。 行動は、他の人から見て不自然には感じられないでしょう。  しかしそうした動作が自分のものであるという実感がひどく薄いのです。 感覚が麻痺しているわけではありません。 痛み、かゆみ、寒さなどは 感じることができています。 ひどくなると、夢と現実の区別がつかなくなる人もいるみたいですが、私はそこまでには至りませんでした。

    自分の動作や認識が自分のものでないような感覚は、言い換えれば、
「自分は生きているのかどうか、よく判らない」
ということになります。 私の場合、夢との区別がつかなくなるところまではいきませんでしたから、 「生きているはず」 ということは判っているわけです。  ここで、
「生きているはずなのに、自分が生きていることがよく確認できない」
という深刻なジレンマが発生し、ますます混乱します。 この時、脳の中でどのようなアンバランスが起きているのか、私にはわかりません。  幸い、私の場合は、このような感覚は、ジェイゾロフトが功を奏するまでの間、週に数回、長くても4〜5時間で、それほど深刻な方ではなかったです。

    しかし私は、この離人感という体験をすることで、
「今、自分は生きていることを実感できているか?」
「今、自分の周囲の世界に対する認識に不自然なところないか?」
ということにひどく敏感になってしまい、「自己同一感」 と 「離人感」 という両極の間の 「どのへん」 にいるのか、不安になることが多くなりました。

    私は、離人感もパニック発作もうつ状態もなく、体調が良いとき、
ふと、
「今、自分は生きている。 これが生きているという感覚か。 フン、正常な時でもこんなもんか。」
と、いちいち自分に確認するようになりました。

あなたは今、何を根拠に、今、自分が確かに生きているということを、自分に言い聞かせることができますか?
今、あなたの周囲に対する感覚の実感は、どの程度確からしいですか?

あなたは今、生きていますか?



    哲学でいう、「実在論」や「認識論」は、私自身、学生の頃から本で読んではいましたが、 自分の存在の危機をこうしたカタチで体験するとは思ってもいませんでした。 この感覚を前にしてみると、 どんな哲学も机上の空論に思えてきます。 だって、どんな哲学書だって、私を離人感から救い出してはくれないのですから。

    うつ病やパニック障害を経験すると、我々の脳ミソの中が、いかに精巧で、いかに絶妙なバランスを保ちながら機能しているかを学び感じることができます。  しかも、そのバランスは非常にデリケートなもので、健康体のつもりでいても、ストレスを自覚していなくても、ホンのちょっとしたことがトリガーとなって 長期にわたる深刻な心理状態に陥ってしまうことがあるのだと、身に染みて感じます。 いつ、誰がなってもおかしくない障害、それがパニック障害です。


    ≪ まとめ ≫
  ■ パニック障害の症状は多岐にわたるが、特に 『死の恐怖』 は恐ろしい。
  ■ 離人感が出てくると、かなりつらい。
  ■ 離人感の経験は、実存や、生きている実感について敏感になり、考える契機となる。




                

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