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パニック障害の病理と薬理

−     パニック障害とは     −


◆ パニック障害とは? ◆
    パニック障害とは、何の前触れもなく、何の理由もないのに、生命の防御機能が突然暴走する病気です。
    発作時の病状としては以下のようなものがあり、このうち4つ以上に該当するとき、パニック障害の可能性があります。

            動悸
            気が遠くなる感じ
            死の恐怖
            手足からの発汗
            手足や全身の震え
            胸痛
            手足のしびれ
            離人感、自分が自分でない感じ
            過換気
            吐き気、腹部の不快感
            めまい
            発狂の不安
            息苦しさ
            冷感または熱感



◆ 原因 ◆
    パニック障害を発症するメカニズムははっきりとは解っていませんが、以下のような仮説があります。

            脳内の青斑核という組織の暴走
            脳内のノルアドレナリンの分泌異常
            脳内のセロトニンの分泌異常



◆ うつ病との関係 ◆
    パニック障害は「大さわぎ」、うつ病は「ふさぎ込み」と、似ても似つかぬ2つの症状ですが、 発症時の脳の状態はよく似ていて、どちらも脳の神経細胞 (ニューロン) 間のセロトニン濃度の減少が起きています。  ニューロン間のセロトニン濃度が減少すると、神経信号が伝わりにくくなり、気分や体調に不調が発生します。 

独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センターHPより

    実際、パニック障害はうつ病を併発することが多く、私自身、パニック発作の前後でうつ状態を経験しています。  ただし、うつ病とパニック障害では、セロトニン濃度が減少する原因が別々です。

    うつ病
    セロトニン量がそもそも少ないため、セロトニンレセプター(信号の受け口) にセロトニンが十分に伝わらない。

    パニック障害
    セロトニン量は正常であるものの、 発信側(シナプス前)のセロトニントランスポータ(セロトニン再回収口) が活発になりすぎていて、 発信されたセロトニンが次第に回収されてしまうため、受信側(シナプス後)のセロトニンレセプター(信号の受け口) に セロトニンが十分に伝わらない。



◆ 薬理 ◆
    ニューロン間のセロトニン濃度を上昇させればよいので、パニック障害患者にはうつ病患者と同じ薬が処方されることが多く、 その代表格がSSRI(選択的セロトニン再取込阻害剤)です。

    SSRIはセロトニントランスポーター(セロトニン再回収口)をピッタリとふさぎます。  すると、一度発信されたセロトニンが再回収されることがなくなり、ニューロン間でのセロトニン濃度が上昇します。  その結果、神経信号が伝わりやすくなります。

    SSRIを服用すると、ニューロン間でのセロトニン濃度は直ちに上昇しますが、症状はそれにともなってすぐに収まるというのではありません。  その詳しい理由はわかっていませんが、現在考えられているのは、受信する側のニューロン先端にあるセロトニンレセプターの数が関係しているのではないかという説です。 
     @ 発症すると、ニューロン間でのセロトニン濃度が減少する。
     A 神経信号が伝わりにくくなる。
     B セロトニンをより多くキャッチするため、セロトニンレセプターの数が増える。
     C ここでSSRIを服用すると、ニューロン間のセロトニン濃度が上昇。
     D 神経信号がスムーズに流れるようになる。 (※しかしここでは症状は改善しない)
     E セロトニンが増えたので、受信側のセロトニンレセプターの数が次第に減少する。
     F 次第に症状が改善する。

    セロトニン濃度の上昇と症状の改善との間にタイムラグが発生するのは、上記のようなプロセスが関与しているのではないかと考えられています。


    ≪ まとめ ≫
  ■ パニック障害を発症するメカニズムを理解するキーワードとして 『青斑核』、『ノルアドレナリン』、『セロトニン』などがある。
  ■ パニック障害とうつ病は、セロトニンが関与しているという点で共通している。
  ■ SSRIの薬理は病理よりも複雑。 直ちに効くわけではない。




                

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