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引退と転向

 ◆ 「引退」と「転向」 ◆
   ランニングを長く続けていると、人生におけるさまざまなイベントや生活の変化、体調の変化などによって、 これ以上ランニングを続けることが困難だと考える時期が必ずやってきます。そして、ランニングライフからの 事実上の引退を決意したり、他のスポーツへの転向を余儀なくされる場合があります。 このページでは、私の体験を通じて、この「引退」と「転向」について考えてみます。


 ◆ 若いころはへっちゃらだった (肺気胸) ◆
   大幅な減量に成功して約4年後、右肺気胸 (肺の膜が破れる) に罹りました。  普通なら即救急車で運ばれるような事態ですが、当時の私は 「なんかちょっと痛いな...」 という程度で、 その状態で仕事をこなした後に10km走りました。 翌日、いちおう医者に診てもらったところ、 いきなり救急車で大病院に移送され、到着後いきなり手術し、肺に管を入れたまま約一週間入院しました。  しかし退院2日後に慣らしで2kmほど走り、その週末には通常の練習量 (20Km) へ復帰しました。 肺という部位なだけに、もう走れなくなるかと思いましたが、その後も自己記録を更新し続けました。

 ◆ ランニング距離の減少 (結婚、子供の誕生) ◆
   かつて私は、ほぼ毎日きまった時間に帰宅できる業務だったため、土曜日に20km走るだけでなく、平日も走り、 週間で50kmの距離を踏んでいました。 しかし結婚して子供ができてからは、帰宅後に家族を放っぽり出して 走りに行くということがだんだんと難しくなり、平日に走ることをしなくなりました。 土曜日にだけ20km走り、日曜日に休養するというリズムになりました。 それでも、週一回の ランニングで脚筋力はほぼ維持できていましたし、体重もいきなり増えるということがありませんでしたので、 それなりに満足していました。

 ◆ ランニングからの引退 (職場での異動) ◆
   ところが仕事がだんだんと忙しくなり、休みが不規則になってきました。 土曜日がつぶれるときもあれば、 日曜日がつぶれるときもあり、また土日の両方がつぶれ、平日のどこかでいきなり、 「明日は休め」となることも。 「土曜日に走り、日曜日はゆっくりと疲れを取る」というサイクルが狂ったため、 平日に取得した休みの日に無理して走り、 翌日からの仕事に影響が出ることもしばしばで、このような状態が約1年半ほど続いたころ、 私は「引退」を決意しました。

 ◆ ランニングの再開とウォーキングへの転向 (病気(パニック障害)) ◆
   無念の引退から約1ヵ月後、私はパニック障害を発症しました。 発症から約3ヶ月間の間は、脳の血管の病気か 心臓の病気だと思い込んでいたため、ランニングなんてとんでもないと考え、まったく運動をしませんでした。 しかし更にその約3ヶ月後、パニック障害という診断が確定し、ホルター心電図で標準よりも心臓が健康で あることが判かりました。 引退から約半年、体重が増えてきたこともあって、 ランニングを再開しました。 体重の増加に伴う脂質の増加がパニック障害発症の 原因のひとつである可能性があるという心療内科の先生のアドバイスも、ランニング再開の理由のひとつになりました。 しかし今度は、走っていたころの感覚を取り戻すことができなくなり、 走るのが苦痛に。 そこで今度は、ランニングからウォーキングへの「転向」を決意しました。 ランニングを続けてきた自分にとって、ウォーキングは大して苦にならないだろうと タカをくくっていたのです。 ところが、ウォーキングをはじめて間もなく、ウォーキングは ランニングと使う筋肉がまったく違うことに気づきました。 足だけでなく腰や腹直筋が痛みました。 それだけなら心地よい痛みというだけで済んだのですが、体重もなかなか減少に転じず、「転向」は失敗だった と感じるようになるのです。

 ◆ ランニングへの復帰 (職場での異動) ◆
   こうして再び、ランニングの庭に戻ってきました。 折りしも職場で異動があり、 規則的な土日休みがとれる業務に戻ってきました。 「カムバツクした」と、自分で自分を 盛り上げているつもりでしたが、本調子のころとはすっかり変わってしまった フォームと距離、タイム、コースでランニングに取り組む中で、 パニック障害の残遺症状に苦しむことになります。
   くわしくはパニック障害のコーナーに書きましたが、残遺症状は漠然とした「死の恐怖」に 取り憑かれるという特徴があります。 パニック障害の中でも、私は特に胸痛を伴うものだったため、 「走る」ことと「死ぬ」ことが関連付けられ、 楽しく走ることがまったくできなくなってしまいました。

 ◆ ランニングへの本格的な復帰 (残遺症状(パニック障害)の寛解) ◆
   パニック障害の薬物治療を再開し、残遺症状は減っていきました。  さらに夏になり、気持ちが盛り上がっていく中で、次第にランニングの走行距離が伸び、かつての調子を取り戻していきました。  はじめて「引退」を決意してから約3年経ってようやく、もとのランニングに専念できるようになっていきました。

 ◆ 器質と機能の衰え (加齢) ◆
   約3年振りにランニングへ復帰し、調子を取り戻してきたときには、すでに40歳を超えていました。 体調管理やペース配分の勘などを取り戻してはいましたが、以前とまったく同じようには走れませんでした。 以前との違いは特に暑熱順化に現れました。 いくら走っても、夏の暑さになかなか順応できないのです。 暑熱順化は暑さに触れることによって促進されます。 しかし復帰後の私は、なかなか暑熱順化が進まず、 気分が悪くなって意識が朦朧とするなど、熱中症に近い状態になりました。 以前では考えられないほどの大量の水分を摂ってから走り、途中も大量の水分を摂って、ようやく走りきれる という状態です。 30歳代のころは暑熱順化も早く、補給も1〜2回、1度の補給で200ml程度の水分しか 摂りませんでしたが、今では500ml全部飲んでしまいます。かつてはそんなことをすれば腹が重くなってしまい、 かえって走りづらくなりました。 今では全行程で1リットル以上の水分を補給しますが、家に帰ってみると 体重が3kg以上減っています。 汗のかき方が変化してきているのです。 また、膝への負担や心肺機能の強さ等、数年前とはかなり変わってきています。 ランニングを楽しむためには、 今後も年齢にあった自己管理が必要になってくるでしょう。


 ◆ すべてのランナーに必ず一度はやって来る ◆
   引退や転向を考えるきっかけといえば、多い順に、次のような感じでしょうか、
          仕事の都合 (残業が多すぎる、休日出勤が多すぎる、休みが不規則、など)
          故障 (筋肉痛、神経痛、関節痛、膝痛など)
          加齢 (体力の限界)
          家庭の事情 (子供が可愛いすぎる、奥さん (旦那) が淋しがり屋すぎる、など)
          病気 (心臓、肺、内分泌系、など)
          環境の変化 (走れない環境への引っ越しなど)
          著しいモチベーションの低下 (うつ病、趣味が変わった、など)

   転向先のスポーツといえば、次のような感じでしょうか、
          ウォーキング (夫婦や親子で楽しむ方向への転換)
          自転車 (金に余裕のあるおじさんのロードバイクへの転向は非常に多くみられます)
          登山 (トレイルランを含む。 達成感を重視?)
          水泳 (結構つらいと思いますが...)
          釣り (ある意味で持久系)

   引退によって、これまで付いてきた筋肉が贅肉に置換する恐れがあります。 そうなるとかえって体調を崩したり、体重増加によって様々な病気の原因を作ってしまうことになるかもしれません。 転向によって、未知の分野に足を突っ込むと、私のように苦労することがあるでしょう。
   かといって、無理にランニングを続けることも考えものです。 環境の変化に対応せずに無理をすることで肉体的・心理的ストレスが増幅され、カラダを壊すかもしれません。 カラダの変化に対応せずに無理をすると、 突然死などの命にかかわる状況を起こす引き金を引くことにもなりかねません。 走りたいという意志を尊重しつつも、 外的・内的な変化に機敏に対応する必要があるわけです。 いま現在若い人も、調子の良い人も、 将来必ずやって来るターニングポイントについて一度は真剣に考えてみましょう


 ◆ 引き際を探る ◆
   理想は生涯走り続けることです。 しかし実際はなかなか難しいでしょう。 私の近所では70歳くらいのおじさんが、ランニングウエアと短パンとサングラスというフル装備で、 淡々と、歩くよりもゆっくり走っている姿をよく目にします。 それは、環境や加齢への対応をし続け、 その時々の自分にふさわしいスピードと距離とコースを見つけることに 成功し続けた結果の姿なのでしょう。
   我々は実に様々な事情から、突然走り出したりするものです。 痩せたい、長生きしたい、体力を維持したい、風を感じたい...などなど。    走りを止めてしまうときも、その事情は様々です。 しかし大切なことは、 自分自身が健康であり、仕事や家庭との折り合いをつけた上で "気持ちよく"走ることです。
   願わくば、引退するときも気持ちよく、絶望や失意のうちに身を引くようなことがないよう、 潔い引き際を目指していきたいものです。

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