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薬について (2)

−     「長期休薬」 を目指して     −


◆ 単価の高い薬たち ◆
   「薬について (1)」 のページでは、薬に対する拒否感、嫌悪感を感じてしまっている人を想定し、お薬も治療に向けて活用できる有用なアイテムであることを書きました。 このページでは、現在薬を服用している人を想定し、薬との付き合い方などを考えてみようと思います。

   パニック障害の場合、第一選択肢となるのは 「セルトラリン (ジェイゾロフト (pfizer)) 」 です。 2015年12月にジェネリックが解禁になり、かなり安価になりました。 処方箋受付では、記載された分量よりも少ない錠数で受け取ったり、ある種類の薬剤だけ省いて受け取ることはできません。 私も、ウエルシアの処方箋窓口でいつも 「お金足りるかなぁ...」 とぼんやり考えていたことを思い出します。 いつも心配そうにコミュニケーションを図ってくれる薬剤師さんに有り難いなと感謝しつつも、
「Tポイントをつけてくれなかったらまったくやってらんねぇぞ」 なんて思いながら 薬を受け取っていました。


     ◇ セルトラリン (SSRI) \42.1(25mg)
     (ジェイゾロフト=\93.5) (25mg)
     ◇ サインバルタ (SNRI) \173(20mg)
     ◇ レクサプロ (SSRI) \216.4(10mg)
     ◇ トリプタノール (TCA) \9.6(25mg)
     ◇ デパス (エチゾラム) \6.3(0.5mg)


   ここに、私が処方された薬の薬価を挙げてみました。 中でも、ジェイゾロフトとサインバルタは付き合いが長かった薬です。 うつに伴う痛みをなんとかしたくてサインバルタを処方してもらうことが多かったのですが、高価なので、いつもある程度の痛みまでは我慢してはチビチビと惜しむように飲んでいました。

   私の場合、薬さえ服用していれば症状は落ち着いていたので、できれば診察を省いて処方箋だけ貰うようにしたかったのですが、病気の特性上、それはできなかったため、毎回の診察代もバカになりませんでした。 このタイプの薬の処方箋は最長4週間分で、一度に3か月分処方してもらったりできず、診察の度に仕事を早退したりと、気苦労も多かったです。


◆ 「断薬」 と 「減薬」 ◆
   薬を処方されてからが本格的な治療のスタートとすると、薬の服用の終了が治療の本体の終了ということになるでしょうか。 この薬の服用の終了を 「断薬」 なんて呼んでいます。 (「断薬」 なんて言うと、"麻薬を断つ"みたいに響くのは私だけでしょうか? もっと気の利いた言葉はないのかなぁと思いますが。)
   といっても、満量服用している状態から、いきなりスパッとやめることなんてなかなかできるものではありません。 通常は、心身の状態を観察しながら少しずつ服用量を減らし、断薬にまでもっていきます。 この過程を 「減薬」 といい、 断薬 に向けた重要なステップと見なすお医者さんが多いです。
   私の場合、減薬のプロセスはほとんど自己責任で行いました。 お医者さんから 「今回はこのぐらい減らしましょう」 みたいな指示は出ず、「今回はどうしますか」 といった形で判断を促され、あまり少なめに希望すると、「いきなりそんなに減らして大丈夫ですか?」 といった具合にフォローが入りましたが、それ以外は、減薬のペースや服用量に対して口を出すことはありませんでした。 いったん減らしたものを逆戻りさせて少し増やしたときなども、何も言わずに受け止めてくれました。    結果的に、そのようなやり方が良かったのか、それともあまりよろしくなかったのかは、いまとなってもあまり判断つきません。 が、結果的には一直線に減らすことはできず、かなり波がありました。


◆ 断薬の失敗 ◆
   最初は、自分がうつ病だなんて自分には受け入れ難いものだったし、薬の値段も高かったため、減薬のペースを急いでいたかもしれません。 早く解放されたかったのです。 "数年"はかかるといわれる断薬までのプロセスを約1年にまで短縮しようとしました。 発作やうつ状態は多少残っていたものの、強い残遺症状が出なくなり始めていたので、無理くり2013年5月に断薬にまで追い込みました。 しかしこの追い込みが、文字通り自分自身を追い込んでいくことになります。 その後は多少つらくても、 「せっかく断薬したのだから」 と頑張ってしまい、自分でも気づかないうちに、今までとは違う形で残遺症状に襲われるようになったのです。 ひどい冬を経験し、春になって寒さが和らいでも症状が改善しなかったことから、「自分は治っていなかった」 ことを受け入れ、2014年5月から服用を再開することになります。
   このころから私は、 「この病気とは一生付き合っていかないといけないかもなぁ...」 とぼんやりと考えるようになりました。 そのぼんやりとした気持ちは、いろんな体験談をwebで眺めたり、関連書籍を読んだりしながら、「ならば、せめて少ない服用量を保って生きていこう」 という気持ちに切り替わっていきました。 よく言えば、「腹を決めた」
(一方で 「諦念」 というか、「悟りの境地」 というか) と言えるかもしれませんが。


◆ タイミングも大切 ◆
   「悟りの境地(なんちゃって)」 に入ってからというもの、まじめに服薬を続け、まず、「服用再開最初の冬は欠かすことなく服用する」 ことを目標に頑張りました。 2014〜2015年の冬を無事に乗り越えました。 気候が暖かくなってからは服用量を減らし、冬になったらまた服用量を増やそうと決めていました。
   パニック障害やうつ状態は、冬に発生しやすくなります。 脳内の神経伝達物質の一部
(GABAなど) は季節変動性があり、特に冬は危ないと言われています (個人差があります!) 。 冬は断薬には向かないシーズンのようです。
   冬は薬の量を増やせばよい。 これを後戻りだなんて思う必要はない、いずれにせよ一生付き合っていくのだからと思いながら服用を続け、2015〜2016年の冬も無事に越えることができました。 ところが実際に過ぎてみると、その冬は、実は服用量が徐々に減っていたのです。 具体的には、一日当たりの服用量が減り、2日に一回、3日に一回という具合に量が減っていました。 これはこの冬、職場での大きな仕事に巻き込まれ、忙しすぎて自分の容体やら通院やらに気を遣っていられず、通院できない (薬を処方されない) 事態が発生し、手許に余ったゾロフトをチビチビと服用したために起こったことでした。 ところが結果的に、うつ状態もパニック発作もほとんど起きずに乗り越えてしまったのです。 自分ができる仕事 (自分しかできない仕事) で多忙になってくると、うつ状態を自覚することは殆どなくなりました。 しかし時々、仕事からふっと解放されたときに、あの 「原因不明の不安」 がすり寄ってくることがありました。
   減薬する季節をいつにするかとか、繁忙期であるかどうかなど、タイミングを選ぶことも重要だと思います。 私の場合はたまたまでした。 これはただのラッキーです。

dicdicの減薬過程 (横軸は経年 (西暦と四半期))
(服用量は一日当たりの平均 (日によって変動させながら減薬しているため)
)


◆ 「休薬」 という考え方 ◆
   このころ私は、「休薬」 という考え方があるのだということを知りました。 「断薬」 とも 「減薬」 とも異なる 「休薬」 という概念は、私の中に新しい考え方をもたらしました。 もともと 「休薬」 という言葉は、抗凝固薬を日常的に使用している患者さんが、(血が固まりにくい状態で手術を行うのは危険なので) 手術前に抗凝固薬の服用を一時的に中止することを指して使う言葉です。 「休薬」 という考え方は、「断薬に成功した」 といって痩せ我慢するのではなく、「今は調子が良いから、ちょっと飲まなくても平気なだけ、いつでも再開できる」 という気持ちで薬から距離を置くことのできる、ちょっといいアイディアだと感じました。 そうした軽い気持ちをもつことによって、気負いせずに病気や薬と向き合うことができます。
   ゆるーく 「断薬」 を目指しつつ、「減薬」 と 「増薬」 を繰り返しつつ、時には 「休薬」 という小休止をはさみつつ、いつか 「長期休薬」 が定着すればいいなぁー・・・・・ そんな気持ちで向き合えたらと思います。
   断薬や休薬を行う際は、その薬の特性や、自分に対する "効き方" を十分に理解してから行うようにしましょう。 通常、SSRIなどは、服用後10日前後しないと効果が得られません。 逆に中断したときも、服用をやめてすぐに辛くなるわけでもないのです。 薬を飲まなくなってからしばらく時間を置いてやってきた辛さと薬の関係に考えが及ばないこともあるかもしれません。 また、しばらく飲んでいなかった薬の服用を再開すると、服用開始直後に発生しがちな副作用 (ジェイゾロフトなら下痢とか頭痛とか離人感) を再び経験する可能性が高いです。 飲んだり飲まなかったりを頻繁に繰り返して、無駄に小康状態を繰り返しても、良くなるどころか悪化する恐れもあります。 その薬の特性、自分の特性、自分とその薬との独特な関係性をよく踏まえた上で、またかかりつけのお医者さんのアドバイスをもらいつつやってみましょう。
   そんなことを数年間やっているうちに、「いま私は長期休薬中」 と自分で思える人は、もう 「断薬している」、と言って差支えないのかも知れませんね。

   私も現在(2016.6現在)、休薬中です。。。。




    ≪ まとめ ≫
  ■ うつ病の薬は、まだ比較的新しいものが多いため高くつく。 (2016年現在)
  ■ 「断薬」 と 「減薬」 はペースとタイミングが重要。
  ■ 「断薬」 と 「減薬」 加えて、 「休薬」 という考え方がある。
  ■ 「断薬」 に拘らないことが、気負いせずに病気や薬と向き合うことにつながり、結果的に自分を救う。






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