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うつ病の確定診断

−     「うつ病チェック」 の不完全さに注意     −


まえおき
 このページは、医学の領域の話題を含んでいます。 また、うつやパニック障害、それらに付随して発生する身体的な不調に関する話題を多く取り上げています。
 ご承知のように、どのような研究、調査結果も100%の真実を 語っているわけではありません。 このページの文章は、そのような既存の情報のうち、 dicdicがうつ病やパニック障害について数年間にわたり経験、調査する過程で目に留まった情報を吟味し、考察し、 知識を再構成する過程で想起した考え方や結論を述べています。 そしてこれらの考え方や結論もまた、100%の真実を語っているものではなく、また読者に対して 考え方や行動の変更を何ら強要するものではありません。 しかしながらページ内容には一定の見解や、「仮定を前提とした意見」を支持する主張を含んでおり、 したがって、一定のバイアスがかかっていることにご留意願います。
 私は医者ではありません。 また研究者でもありません。 同じような病態の方への参考になればとの思いで書き下ろしたものであり、治療に向けた積極的で責任あるアドバイスとは異なることをご理解ください。 またこのページには、うつ症状を呈している時の私自身の主観的なエピソードについて多くのスペースを割いていますが、その状態がうつ病の一般的な病態を代弁するものとは考えていません。 うつ症状には実に様々なエピソードが存在し、心理状態も身体症状も実に多様なものであるという認識の上に立ちつつ、このページでの私の論を補強するために、私自身の症状の主観を記しています。 それら、症状の状態についての記述は、あくまで 「一例」 であるという認識のものに目をお通しください。 これらの記述に対するあからさまな反対意見や質問は受け付けることができないことをご承知おきください。
 このページの内容を参考にした言動によって発生したいかなるトラブルについても dicdicは責任を負いかねますのでご了承ください。


◆ 『うつ病とは何か』を超えて ◆
   「『うつ』は病気じゃない、気分や気力の問題だ」 という主張は後を絶ちません。 が、もはやそのような非科学的な根性論を相手にしている暇も体力もないので、ここでは、「では、その『うつ病』とは、いったい何なのか」について、もう少しだけ踏み込んで考えてみたいと思います。
 うつ病にまつわる症状については、すでにいろいろ言われています。 巷によくある 「あなたのうつ病度をチェック」 みたいなものを見れば、周りの人や医者が、うつ病というものの症状をどのように考えているのかがわかります。


 うつ病チェックの例
  ・体がだるく疲れやすい
  ・気分が沈む
  ・テレビや音楽を視聴しても楽しくない
  ・特に朝方無気力
  ・特に朝方に不安
  ・肩こりや頭痛がある
  ・夜、寝付けない
  ・朝、起き上がれない
  ・途中覚醒や早朝覚醒が多い
  ・食事が美味しくない
  ・息が詰まる、喉が詰まる、またはそのような感じがする
  ・生き甲斐がない、人生が詰まらない
  ・自分は生きている価値がないと思う
  ・仕事の能率が悪くなった
  ・以前は几帳面で正確な作業をこなすことができた
  ・罪悪感がある
  ・死について考えたり、死にたいと考える
 


   現在うつ病の方、かってうつ病を経験された方は、このチェックシートをみてどのように感じるでしょうか? 私のうつ症状は現在ほとんど寛解しましたが、このチェック方法には不完全さ...というより、不自然さを感じています。
 この冒頭で、「『うつ』は病気じゃない、気分や気力の問題だ」 という主張は非科学的な根性論と切り捨てましたが、うつ病に対する理解がなかなか進まない背景には、上記のような簡単でゆるゆるなチェックのために、「うつ病ではないのにもかかわらず、うつ病と診断されてしまうケースが多すぎる」 といったことがあるのではないかと思います。


◆ 医療機関と製薬会社のうんぬん... ◆
   簡単なチェックで、うつ病と判断されてしまい、抗うつ剤が大量に処方される、そのような現状は実際にあると思います。 その背景には確かに、ネット上で罵声にも似た言葉でよく語られる、病院や製薬会社の体質の問題もあるかもしれません。 しかしより本質的で現実的な問題は、「うつ病の確定診断の手段がない」 ということに尽きるでしょう。 一般的には、簡単な問診に加え、上記のような 「うつ病チェック」 をさせられ、○個以上該当すればめでたくうつ病と診断されるようですが、チェックの項目も、判定基準となる該当数も、医療機関によってまちまちなのです。

たとえば、
胸部レントゲン検査で(片方の)肺に萎縮があり、CTでブラが見つかれば、肺気胸と確定できます。
またたとえば、
イヌリンクリアランス測定で、GFR値が15を下回れば、腎不全と確定できます。
では、うつ病の診断を確定するための客観的な基準は何なのでしょうか?


◆ うつ病の確定診断は可能か ◆
   うつ病の診断を確定するための客観的な基準は、現在のところ存在しません
 ちょっと知っている人なら、アメリカの
「DSM-X (精神障害の診断と統計マニュアル) 」 がアタマに浮かぶかもしれませんが、これもまた、タイトルが示している通り、統計的なデータを参考にしているわけで、いわば、これまでの"凡例"から、「うつ病」 と診断してよいというような基準が述べられているだけです。
 うつ病の原因は、脳内の情報伝達物質 (とくにモノアミン) の不足や、利用のされ方 (再取り込等) に障害があると考えられていますが、それが真の原因であると確定されているわけではありません。
(ほぼほぼ、それが原因と考えてよいのですが、「何が」、「どの部位で」、「どのような状態」 になっているのか(よく 「機序」という)について、確定的なデータや根拠が不足しているのです。)
 脳味噌を写真や波動や磁場などで測定するのは容易ではないと思います。 細胞膜上や細胞内の反応のカスケード (細胞内の酵素反応の連鎖) の様子や、シナプス間隙の様子を測定するのは非常に困難です。 また、血液や尿などを採取して検査するのも、なかなか大変だと思います。 何しろ、採血したまではよいものの、どの成分を見ればよいのか、まったく想像もつきません。 しかも、うつ病の症状は時間帯や状況によって変化しますので、経時変化を測定する必要があり、血中成分や脳細胞の反応の様子の観測はそれだけ大掛かりなものとなります。


◆ うつ病の確定診断の将来 ◆
   とはいえ、将来的には何らかの確定診断の手法が開発されるかもしれません。 現在は 「うつ病」 というひとくくりの名前がついていますが、障害が発生している部位や細胞内外の物質の挙動の違いによって、細かく病名が分かれるかも知りません (わたし自身は、この可能性は大いにあると考えています。 そして、この分類によっては、治療へのアプローチが全く異なり、現在の治療方法が、全く間違いだったというケースも出てくると思います) 。 また、パニック障害や頭痛など、関連していると考えられている病態との関連が解明されるかもしれません。 逆に、現在ではまったく関係がないと思われている病態と実は密接な関係があることが判明するかも知れません。


◆ 人生で2回のうつ病エピソード ◆
   私は学生時代にも、調子が悪くなったことがあります。 身体症状はほとんど認められないので、病院には行きませんでした。 家族には、その取り留めもない症状を訴えましたが、当時は 「うつ病」 というものの存在を知らず、精神科に入院するかと親に脅かされ、放置していました。 学校にはほとんど行かず、家のテレビの前で 「ぼーっ」 と過ごしていました。 非常につらく、今日か明日にでも世界が崩壊するのではないかというような不安に包まれていました。 そのような状態は約半年続きました。 当時はまだ若かったこともあり、卒論やら、就職やら、目先の課題と取り組むうちに自然と症状は寛解し、いつしかそんな状態になっていたことすらすっかり忘れて、生活に没頭していきました。
 それから20年近くたって、こんどはパニック障害で病院に駆け込みました。 最初に駆け込んだ先が脳神経科の先生のところであったことが幸いしました。 パニック症状に付随していたうつ症状についてもていねいな説明を受けることができました。 薬を服用しながらも小康状態が続きましたが、このホームページにあるように、症状と薬の量を注意深く観察しつつ、寛解に向けて努力しました。
 また、うつ症状が起きたときの状況や、気分の実際、症状の主観、体調の変化を記録し続けました。
 そうして、20年前の 「あの」 状態が、うつ状態と言われるものだったのだなと思えるようになりました。



◆ さて、本人の主観は? ◆
 おことわり (くどいようですが...)
 このパラグラフには、うつ症状を呈している時の私自身の主観的なエピソードについて多く書かれていますが、その状態がうつ病の一般的な病態を代弁するものとは考えていません。 うつ症状には実に様々なエピソードが存在し、心理状態も身体症状も実に多様なものであるという認識の上に立ちつつ、このページでの私の論を補強するために、私自身の症状の主観を記しています。 それら、症状の状態についての記述は、あくまで 「一例」 であるという認識のものに目をお通しください。

   1.だるさ
   わたしが学生の時に経験したうつ状態は、朝起きるのが次第に辛くなるところから始まりました。 「疲れているのかな...」 と推測するものの、ビタミン剤やドリンク剤を飲んでも良くならず、次第に午前中の授業を欠席するようになりました。

   2.無気力、億劫、訳もなく悲しい
   次第に動く気力がなくなり、立ったり座ったり、振り向いたり、着替えをしたりするのすら億劫になっていきました。 そしてある日、何事も億劫になり無気力になってしまった自分に嫌気がさし、急に涙がこぼれてきたのです。

   3.心も体も停止
   「自分はどこかおかしい」 と思いながらも、病院に行けば、ただの 「不定愁訴」 と片づけられてしまうのが予測できたので、放置していました。 そして次第に、「億劫」 を通り越して 「止まっている」 状態になっている自分に気づき始めます。 行動も思考も 「止まっている」 と感じるのは、億劫になっている自分を感じてしまうと悲しくなってしまうからかもしれません。それを避けるために感情が止まったようになるのかもしれません。

   4.空白、真空
   しまいには、「止まっている」 自分にすら気づきたくなくなると、「空白 (アタマの中が真空) 」 の状態がやってきます。 ここはなかなか理解しがたいところだと思いますが。

   5.焦燥、時間の流れが悲しい、孤独感
   一方、 「止まっている」 自分に対して、世間は動いていることに異常なまでの焦りを感じてもいます。 テレビでニュースや株価など、時々刻々と変化している状態が自分に伝わるようなものに触れると無性に焦りを感じます。 その他、時間の流れを感じるものとして、太陽の高さがあります。 当時私はマンションの6階に住んでいて、太陽の動きが嫌でもよく見えてしまうのです。 夕方になると無性に不安になるのです。 午前中の方がまだ楽です。
(この点は、一般的なうつ病チェック項目と逆になっていることに留意したい。) 「今日も僕だけを一人置いて世界が過ぎ去っていく」 といったところでしょうか。 おいてけぼりのような感覚とはちょっと違うような気がします。 「置いていかれる」 というのは、「僕を置いていく誰か」 が必要ですが、このころにはすでに孤独であり、「時間」「世間全体」 が、自分を置いていくような感じになります。

   6.強い不安
   このままでは進級があやうい、就職も、卒論も、卒業もできないかもしれないという不安が日々募っていきます。 しかし無気力や不安や焦燥感に押しつぶされて、具体的な対策や行動がとれません。 学校はほとんどいけなくなり、一時は休学か留年かという状態になりましたが、なんとか卒業できました。 (卒業させてもらえたという感じ)

   上記の1〜6は、段階的に変化したわけではなく、累積していったという感じです。つまり、
「2.無気力、億劫」 の段階で感じていることは、「だるさ、無気力、億劫、訳もなく悲しい」 であり、
「4.空白、真空」 の段階で感じていることは、「だるさ、無気力、億劫、訳もなく悲しい、心も体も停止、空白、真空」 である、
ということです。 うつ病というと 「元気がない」 等という表現から、そと見は静的な印象があるかもしれませんが、本人のアタマの中では悲しさや空虚さ、焦りなどの猛烈な嵐がふいている、そんな感じです。

 さて、約20年後、パニック障害を発症したときには、全く別の症状が現れました。

   1.パニック発作 (動悸、気が遠くなる)
   夜間に動悸で目が覚めました。 (このへんについては顛末のページを参照)

   2.不安感
   「自分は何か (脳か心臓) の重い病気かも知れない」、「通勤途中や職場で突然倒れてしまったらどうしよう」 という不安が強くなました。

   3.萎縮
   「倒れてしまったらどうしよう」 という不安感が思考の大半を占め、物事に集中できなくなりました。 電車の中で本を読む程度の集中力すら出ず、ただじっとしているだけ。 他に集中して考えることが特になく、自分の症状や不安に思考が集中している状態でした。

   4.離人感
   これも、他のページで書いたのであらためて詳しくは述べませんが、 「自分が生きて、活動していることを、自分自身がはっきりと知覚できない」 ような状態です。 これらの状態を一通り経験した後、かかりつけの医者でのホルタ―心電図の結果が出て、異常がなかったことから、ようやく 「パニック障害」 という病名が付きました。 しかしジェイゾロフト(セルトラリン)の効果が落ち着いてくるまでは、離人感はしっかり取れきれないことが多かったです。

   5.残遺症状
   残遺症状についても、そのエピソードについては別のページで詳しく書いたので、ここでは割愛します。 強い死の恐怖、不安、身体症状 (背部痛、肋間神経痛、頭痛) が強く、仕事や生活に対する気力を奪い続けました。



◆ 何が不安なのか ◆
   学生時代のうつ状態と、パニック障害に伴って発生したうつ状態で共通して言えることは、「『不安』 の正体がよくわからない」 ということです。 「症状まとめ」 のページの筆頭が、「何が不安なのかわからない。何が不安なのかが自分自身で解らないこと自体が不安」 となっていますが、うつ状態が 「ズーーーン」 とやってきたとき、何が不安なのかは自分でもよくわかっていないことが多いのです。 ただ、理由があって非常に大きな不安を抱えている時と同じような心理状態であることは理解できます。 つまり、体の中で、もっと言えば頭(アタマ)の中で、もっと言えば脳細胞のどこかで、「理由があって不安を感じている時と同じような回路が形成されているのだろう」 と感じてはいますが、何が原因でそうなっているのかが、自分でもわからないのです。 理由もないのにそうなってしまっていることで、さらに不安になり、怖くもなります。

 もちろん原因がまったくないわけではありません。 進路への不安など、人生には不安はつきものです。 私がうつ状態を発症した時期は、2回とも、たまたま将来の自分のあり方を考えていた時期と一致します。 しかし、危機にさらされていたわけでもないのに、通常感じる不安の程度をはるかに超えていました。



◆ では、いったい何なのか ◆
   通常感じる不安の程度をはるかに超えて不安になってしまう、その原因は何なのか?
 それがわかているくらいなら、うつ病は大して難しい病気じゃないだろうということになっちゃいますが、ひとつ考えられるのは、自分自身による不安の増幅です。 暗がりで、幽霊でも出そうだなとか感じるような場合です。 墓地を歩いていて、最初は平気なようであっても、普通ならスルーするはずのちょっとした物音や物影のせいで、「ギャーッ」 となったりする、あれです。
 しかし、それにしたって、怖くない、何でもないとわかれば、ふつう、恐怖や不安は遠のきます。 しかし私が経験したうつ状態では、「何が不安なんだ? なにも不安なことはないだろう。」 と自分に言い聞かせても良くならず、逆に不安や恐怖感が増幅されることがあります。 私は霊感がまったくありませんので、何かに憑かれているわけでもないです。



◆ やはり身体があやしい ◆
   この、漠とした不安について、不安ながらも考えました。 不安を感じるのは脳であり、不安を感じる理由がなく、言い聞かせてもダメだということは、脳の中で、不安を感じる「神経」とか、「細胞」とか、「回路」とかが暴走しているのではないかと考えました。
 「不安」 は、人間の生存に欠かせない感情です。 危険を危険と認識し、それを回避する行動を促す契機となるからです。 危険回避行動に正しくつながる不安を 「正常な不安」 と呼ぶことにしましょう。 それに対して、@さしたる危険もないのに、あるいは、Aいくら不安がっても仕方がないにも関わらず、B他の行動まで制限してしまうような不安が押し寄せてしまう、あるいは、C自分でもおかしいと感じるほどの不安な想いが募ってしまう時、それを 「病的な不安」 として、「正常な不安」 と区別しましょう。
 病的な不安であれば、無気力、億劫、停止、空白、真空、焦燥といった感覚も付随しているかも知れません。 いくら前向きになろうと意志的努力を振り絞ろうとしても、絞る気力すらないとき、気力が何かに押さえつけられているような感覚もあるかもしれません。 非常に抽象的ではありますが、本当に治療が必要なうつ病ならば、「これは正常ではない」 と本人も思わざるを得ないような何かを感じているはずです。



◆ 「原因」 と 「機序」 と 「病態」と ◆
   主観に基づいた話がしばらく続きましたが、確定診断のための客観的な基準のところに話を戻しましょう。
 私は、うつ病という病の原因が明らかになり、確定診断が可能になる日がいつかやってくると信じています。 おそらくですが、現在よく言われる、シナプス間隙での化学物質の挙動などについては、いずれ、「原因」 ではなく 「病態」 の一つとして認識されるのではないかと思います。 他にも、ミトコンドリアの調子が悪いとかいう研究成果も報告されていますが、それも、うつ病の"根っこの原因"から、様々な 「機序 (メカニズム) 」 を通じて発生した現象の一つなのではないかと思っています。 うつ病の病態には、身体のどこかの痛みや動悸や胃腸の不調など実に様々ですが、それらも含め、かなり限られた数の原因から発生したものと認識される日がくるのではないかと思います。
 また、病態は同じように見えても、原因が異なるため違う病気として扱われるものも出てくるかもしれません。 うつ病の千差万別さは、いつの日かいくつかのグループに整理されていくのではないかと想像しています。 ひょっとすると、パニック発作の前後に現れるうつ状態は、うつ病の人のうつ状態とは全く別のものかもしれません。
 その、 "根っこの原因" は、よく言われる環境要因 (ストレス) に加え、その人特有の思考パターン (性格) とか、遺伝的な要因の複合したものと言われています。 「環境要因 (ストレス)」 と 「特有の思考パターン (性格)」 を定量的に評価するのは難しいでしょうが、遺伝については、ある程度の規模の調査を行うことで特定されていくのではないかと思います。



◆ 食事療法やサプリもゼロではないかも ◆
   遺伝子は、細胞の中の核と呼ばれる場所に存在していることはよくご存知と思いますが、すべての遺伝子が常に機能しているわけではありません。 遺伝子の発現のためには、まず遺伝子の情報 (塩基配列順序の情報) がmRNAによって持ち出されなければなりません。 (核孔から核の外に出てきたmRNAにリボソームが取りつき、そこにtRNAが次々とやってきてタンパク質を合成していきます) この発現を促す (応答促進) ような機構 (カスケード) が細胞にはあり、その機構を誘発するにはまず細胞の表面 (細胞膜) 上に存在しているたんぱく質 (膜たんぱく質/受容体) のスイッチを押すような役割を果たす物質 (リガンドとか一次メッセンジャ) が結びつくことが必要です。
 パニック障害についてはセロトニントランスポーター遺伝子が関与しているなどと言われることがありますが、そのような、異常心理を起こさせるような遺伝子がいくつかあって、それが細胞内の反応によって応答し、病気が発生するのかも知れない。 細胞内の応答が開始するためには、一次メッセンジャとなる物質がまず細胞に取りつかなければなりませんが、その取りつく物質の代謝が異常に促進されたり (亢進) 、逆に抑制 (阻害) されたりすることにより膜たんぱく質の活性/不活性が左右され、いずれ細胞内の応答、ひいては遺伝子の発現を左右するのではないかと私自身は推測しています。
 ここで並べて書くのはどうかと思いますが、最近、統合失調症の症状をビタミンB3
(ナイアシン) が緩和するかも知れないことが言われていおり、うつ病についてもそのようなかたちで、ある特定の物質や栄養素の体内での量や代謝による活性/不活性が、遺伝子の発現にある程度の影響を及ぼしていることは想像できます。


◆ 話を戻して... ◆
   ここで、このページのはじめに挙げたチェック項目をもう一回見てみましょう。 私が人生で2度経験したうつの状態でこのチェックを行えば、十中八九うつ病と診断されるでしょうが、どうなんでしょう?  チェックがついた数が私と同じであれば、みんなうつ病と言えるでしょうか?
   人間なら (少なくとも日本で生活している一般ピープルであれは) だれの身にも起こりうるようなことを列挙し、「これにいくつ該当すればうつ病です。」 なんて、そう簡単に言えるのでしょうか?  私に言わせれば、残念ながらこれでは 「正常な不安」 と 「病的な不安」 をスクリーニングすることはできません。 このチェック方法だと、本当にうつ状態に苦しむ患者だけでなく、慢性疲労や軽度の神経痛などの人まで該当してしまいます。 これでは本当にうつ状態に苦しむ人が、全く違うアプローチで治療を行うべき人まで含む大群の中に埋もれてしまいます。 さらに、「うつ病って病気なの?」 と首をかしげる人を更に増やす結果にもつながってしまうのではないでしょうか。

 dicdicのうつ症状はほとんど寛解しましたが、今後も世間の人のうつ病に対する考え方や、心療内科の方法や、医歯薬の動向についてしっかりウオッチしていきたいと思います。



    ≪ まとめ ≫
  ■ 現在行われているうつ病チェックは、あまりにも簡単でユルユルなものである。
  ■ 現在、客観的で確実なうつ病の診断方法は存在しない。
  ■ うつに伴う体内でのいくつかの現象は確認されているが、それらは原因ではなく結果の現象に過ぎない(dicdic持論)。
  ■ 症状の主観を自分で記録することは、あとで必ず役に立つ。
  ■ うつに伴う不安では、何が不安なのか、自分でもよく判らないことが多い。
  ■ 「正常な不安」 と 「病的な不安」を区別することは、うつ病患者のスクリーニングにおいて重要である。
  ■ 本当のうつ病患者ならば、「これは正常ではない」 と本人も思わざるを得ないような体内や脳内の異変を感じているはず。
  ■ うつ病に関連する遺伝子に対する細胞内での応答促進の機序解明が、うつ病の原因究明と確定診断確立に向けて重要になるだろう(dicdic持論)。
  ■ 現在のゆるゆるなうつ病チェックを続けている限り、うつ病に対する理解も進みづらくなる可能性がある。


                

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