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『金融のしくみは全部ロスチャイルドが作った』を読みました

  書店に平積みになってました。店頭でパラパラとめくってみた感じでは、胡散臭い臭いがプンプンしていましたが、面白そうなので買って読んでみました。
ところが、読めば読むほど残念な内容でした。 金融システムの成り立ちについての解説は、とても分かり易く書かれています。ロスチャイルド家の「行動計画(本書では25項として紹介)」の引用についても、なかなか興味深いものがありました。ところが、この行動計画の通りに歴史が動いてきたことを示す過程の説明が、何ともお粗末で、説得力に欠けるものでした。

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  著者本人は、膨大な資料に目を通した結果として、行動計画と史実の一致が偶然ではないと確信するに至ったのでしょうが、読者にそれと同じ若しくは近い次元での確信を与えるのには不十分で、
「実は●●の嫁さんはロスチャイルド家の出身なのです。」とか、
「この人物は、実はロスチャイルド家の●●の●●で....」(まぁ読んでみてください)
という論調に続き、あってもなくても本論の補足にはならないような史料をパラパラと並べた後、
「これも行動計画の通り、ピッタリあてはまってますね」と説きます。
特に、5、6章では、哲学やイデオロギーや宗教的思想の流れがよくつかめず(というか皆無)、利害と血縁、民族だけで説明しようとしているようにもとれます。言い換えれば、論証の組み立てがあまり上手ではなく、そのために、こじつけともとれるような内容に見えてしまっている部分が多いわけです。しまいには、日本の山口組や、現総理大臣の麻生太郎までが、行動計画に沿った歴史の流れで必然的に現れたように書かれる始末で、ともすると、その辺の安っぽい都市伝説まがいのものにさえ見えてしまいます。(そうした繋がりがあることは事実かも知れませんが、論述があまりにもお粗末で信憑性に欠ける)

  せっかく題材もとても良く、文章も平易なのですが、スラスラと読めるわりには、何も残らない「日刊現代」とか「夕刊フジ」の類のような、ウスッペラい読み物になってしまっているのは残念です。1〜3章で金融の仕組みとロスチャイルド家について触れているので、そこから7、8章に飛躍しても問題ないのではないかと思いました。どうしてもロスチャイルド家の行動計画と史実の一致を語りたければ、4〜6章は別の書籍で、もっとじっくり、証拠を挙げて理論的に述べるべきだと思います。(できれば、もっとちゃんとした物書きに頼んで)
  「金融の仕組み」という言葉に釣られて買うと大失敗となりますので、書籍のタイトルにも問題があると思いました。
  とはいえ、陰謀論として片付けるには、何とももったいないテーマであり、私にとっては、ロスチャイルド家について興味を持つきっかけになりました。これに近い内容の話が今後いろいろな作家や学者からわき上がってくると面白いことになるのではないかと思いました。

2008/10/21

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