Home > dicdicの読書記録 > 2010年B(8月)

読書記録 2010年8月

直近の読了順に掲載してます


No:20100831
 江澤 博己 『ちょっと面倒なことがあなたを変える』
 総合評価: ★★★☆☆
 <★★★☆☆> ホテルでの接客態度を中心に、心がけのヒントを教えてくれる本。在り来たりの啓発本と比べて言葉が平易で押し付けがましさも感じない。自分でリストアップしてみたり、座標にマッピングすることでメンタルな部分を言葉や図で明確にするという発想は良かった。
 読了日: 2010年08月31日

No:20100830
 小此木 啓吾 『あなたの身近な「困った人たち」の精神分析』
 総合評価: ★★★☆☆
 岡田尊司の『パーソナリティ障害』と、コンセプトも内容もほぼ同じ。こちらの方ご先発だけど、私の中ではこちらの方が読むのが後だったので新鮮味に欠けた。しかし症例が多く、文章も読みやすい。著者自身を省みるくだりもあって良かった。
 読了日: 2010年08月30日

No:20100829
 ルソー,Rousseau 『エミール 下』 岩波文庫 青 622-3
 総合評価: ★★★☆☆
 欲望と恋愛について書かれた章。ソフィーを通して語られる理想の女性像には、こちらもクラクラするほど。ソフィーと時間を共有する中で、次第に「独り立ち」が始まる。中途半端な者に家庭を持たせるわけにはいかないとばかりに、彼の教育の総仕上げが始まる。「大人の品格」を考える上においては必読の巻。
 読了日: 2010年08月29日

No:20100828
 ルソー,Rousseau 『エミール〈中〉』 (岩波文庫)
 総合評価: ★★★☆☆
 最も長い第4編。いよいよ人間形成を手助けする段階へと踏み込む。教育は知識や物腰を叩き込むだけではない。なぜそうなければならないのか、動機と精神のあり方を述べてゆく。その過程で宗教にかんして長大なページを割いている。啓蒙思想を考える上で、ヨーロッパの宗教史を考える上でとても参考になる。現代日本のような表層だけの教育ではない、世界の本質を把握する過程を大切にしながらも、宗教を利用した権威に痛烈な批判を浴びせている。「何が正しいのか」を模索する時代にあって、力強い確信に満ちた言葉の数々。
 読了日: 2010年08月28日

No:20100827
 ルソー 『エミール〈上〉』 (岩波文庫)
 総合評価: ★★★☆☆
 実現不可能なことではあるけれども、あくまでそれをモデルとして、理想的な教育を説く。岩波の上巻はその1〜3編。分厚くて文字が小さいが、訳のおかげで読み易かった。まず人間とは何かを考えるところから始まる(第1編)。幼年期は大人に服従したり媚びるのではなく「自由に」育つことを(第2編)、学習とその効果、そして評価することについて(第2編)、綿密に述べてゆく。
 読了日: 2010年08月27日

No:20100826
 メルライン フライダ 『英単語マニア―語源事典』
 総合評価: ★★★☆☆
 読み物として楽しめる。私はもともと単語力がないので、知らない単語も多く、知っていても記憶がおぼろげで、いまいちピンと来ないものも多かった。しかし語源をたどるというコンセプトの書籍の中ではピカイチの出来だと思う。ラテン語など、英語以外の言語にソースを求めつつも、見開き程度の分量にまとめている。単語力のある人は楽しめると思う。
 読了日: 2010年08月26日

No:20100825
 牧野 二郎 『Google問題の核心』 開かれた検索システムのために
 総合評価: ★★★☆☆
 以前、シソーラスを利用した検索ロジックの開発を手がけたことがあった。完璧に公正なインデックスを蓄積できるシステムなんて簡単ではないし、規模がデカいからといって、野放しにしておけば自然と中立に なるなんてことは有り得ないことはよく知っている。開発者や設定者の意図が必ず入り込んでいる。公開インデツクスという考え方はとても魅力的だけど、いずれインデックス領域も破綻する。検索システムは現実のwebのミラーに漸近するし、永遠に役立つシステムなんて、今後も現れないだろう。
 読了日: 2010年08月25日

No:20100824
 A・ホームズ,M・リーブス 『通勤電車でイライラしない技術』
 総合評価: ★★☆☆☆
 思っていたよりもくだらない本。各セクションの冒頭は、皮肉に脂がのり過ぎていて読むのが面倒になる。でも、「恐怖の口臭人間」と「ゲロ吐き氏」には爆笑だった。英国と日本の違いを感じた。
 読了日: 2010年08月24日

No:20100823
 ランス・アームストロング 『ただマイヨ・ジョーヌのためでなく』
 総合評価: ★★★★★
 死と隣り合わせの病を経験すると、健康や命の尊さが実感できるという。私もその一人。呼吸もできないような状態から復帰し、ランニングを再開した時の喜びは忘れられない。再発の可能性と共に生きる中で、時折、かつての幹部を心で意識したり、手のひらを当てたりしてみる。病前の自分を超えるまでに復活したとしても、そうすることで、予後はまだ続いていることを実感する。そうやって、自分や他人を尊重する意識に間断ならしめんことを言い聞かせる。病から復活した者の強さはそんなところから表れるのだと改めて思った。
 読了日: 2010年08月23日

No:20100822
 大澤 真幸 『逆接の民主主義 ――格闘する思想』 (角川oneテーマ21)
 総合評価: ★★★☆☆
 大澤真幸先生の本は3冊目。北朝鮮に対する態度、貧困の考え方、古典と歴史に対する注釈はどれも納得のいくものだった。連載記事を集めたものということもあり、テーマに一貫性が感じられないけれども、部分部分では共感できた。大澤真幸先生の本としてはややハズレかな....。
 読了日: 2010年08月22日

No:20100820
 トランスナショナル・カレッジ 『フーリエの冒険』
 総合評価: ★★★★☆
 手作り感満載。編者はみな素人だが、三角比や三角関数の概念をすんなり受け入れる覚悟がないと、文系学生や文系出身者は読み進めることが難しい。詰め込むことが案外多く、工学部出身の私自身、結構キツかった。しかし、「こんなことを勉強して何になるの?」とか、「これがどんな現象を抽象しているの?」といったような、学生が抱く原初的で素朴な疑問に答えようとする執念と努力が感じられる意欲作。 値段が高すぎることと、サイズがデカすぎることが難で星4つ。
 読了日: 2010年08月20日

No:20100819
 堀場 芳数 『虚数iの不思議』 (ブルーバックス)
 総合評価: ★★★☆☆
 大学の時に受けた「複素解析論」の記憶が蘇る。第3章ぐらいまでは退屈だったが、4章、5章以降は数学の魅力を堪能できた。オイラーの定理の証明も非常に簡潔(フーリエ級数からのアプローチはキツかった)。 高校生ぐらいを対象にしているようなアプローチの仕方だが、大学生でも十分楽しめると思う。
 読了日: 2010年08月19日

No:20100818
 松島直也 『NLP速読術』
 総合評価: ★☆☆☆☆
 書店で5分半の立ち読みで読み終わった本。この著者自身、この本が書店で速読読みされることに気づいているだろうか。 しかしこの本はNLPを利用した小遣い稼ぎにしか見えない。速読ではなく飛ばし読みや斜め読みをしたり、要領よく要点を掻い摘むといったようなエセ速読法が、この値段で売られていることに疑問がわく。速読を学べる本ではないので要注意!
 読了日: 2010年08月18日

No:20100817
 中村 邦生 『いま、きみを励ますことば―感情のレッスン』 (岩波ジュニア新書)
 総合評価: ★★★★★
 素晴らしい本。 思春期の若者が読めば、切ない恋心や、やり場のない怒りや正義感を整理する助けになるだろう。大人が読めば、凍てついた人間関係や嘆かわしい現代の社会に対する希望を取り戻すことができるかも知れない。良書案内としても素晴らしい。美しい言葉、思考を要する言葉との出会いの向こうに、本来の人間の在り方が見えてくる。良書。
 読了日: 2010年08月17日

No:20100816
 高見 順 『死の淵より』 (講談社文芸文庫)
 総合評価: ★★★★★
 死を目の前にした時、初めて鮮やかに自覚される生命の素晴らしさ。 「団地のアパートのひとつひとつの窓に / ふりそそぐ暖い日ざし / 楽しくさえずりながら / 飛び交うスズメの群 / 光る風 / 喜ぶ川面」 高見順の強さ、切なさ、潔さ、そして脆さ。 友達全員に勧めたい詩集。
 読了日: 2010年08月16日

No:20100815
 バートランド ラッセル 『人生についての断章』
 総合評価: ★★★★★
 ラッセル独特のユーモアと皮肉たっぷりの、読み応えのある一冊。 当時の新聞のコラムのようだが、今朝の新聞のコラムだと言っても、全然不自然さを感じないほど、現代にも当てはまる指摘に、あらためてラッセルの偉大さを知る。学生、政治家、サラリーマン、起業家、資本家、学者....当時も今も、考えていることや遣っていることに大差はない。古典ではなく現代人の教科書として。
 読了日: 2010年08月15日

No:20100814
 瀧本 往人 『哲学で自分をつくる 19人の哲学者の方法』
 総合評価: ★★★★★
 著者の瀧本という人はちょっと知らない人だったが、中身は哲学に親しみやすいように工夫されている。楽しく易しい。大学生が逐語的に理解するのにちょう どいい難易度。 先人の考えを吸収し、思考のパターンを身につけることはとても大事。 永井均の本とは正反対の感触。良書。 子供に読ませたい。
 読了日: 2010年08月14日

No:20100812
 上坂 元祐 『宝くじ億万長者の「宝くじ」強運の法則』
 総合評価: ★★★☆☆
 この本を読むと、「能天気に生きろ」とうったえられているような気がする。 宝くじなんて確率の問題だと思う。Excelで乱数を求めればよい。何かコ難しいことを書いて、いかにもある傾向性があるように見せて、大量の計算を行わせる書物よりよっぽど良い。宝くじに当たるためというより、日本人のストレスに効く本。と言ってしまうと言いすぎか....。巻頭の、当たりくじの写真の連発も強いインパクトがある。
 読了日: 2010年08月12日

No:20100811
 W.リップマン 『世論 (下)』 (岩波文庫)
 総合評価: ★★★★★
 『ちょっとでもステレオタイプに混乱が生じると、宇宙の基盤が襲撃されたように思えるのも不思議なことではない。 しかし、そこで襲われているのは我々の頭にある宇宙像の基盤である』(本文から) この考え方とフッサールの現象学とは、恐らく無関係でない。 ステレオタイプ化された言葉を見聞きしたりしただけで頭に血が上るような人たちでも、エポケーという概念を理解するのは難しいことではあるまい。今後はフッサールとリップマンの関係について調べてみたくなった。
 読了日: 2010年08月11日

No:20100810
 W.リップマン 『世論〈上〉』 (岩波文庫)
 総合評価: ★★★★★
 偏見を持つという動作が、性格のネジ曲がった人間に特有な行動であるという思い込みこそが、一種のステレオタイプであると感じた 『我々はたいていの場合、見てから定義しないで、定義してから見る。 そして拾い上げたものを、我々の文化によってステレオタイプ化されたかたちのままで知覚しがちである。』―本文から  こういった思考パタンは誰にでも起こるということをこそリップマンは指摘したのであり、そのことによって生じる正しい情報の遮蔽が、かえって、個々人の人生に不利益をもたらすのだとわかった。
 読了日: 2010年08月10日

No:20100809
 長崎 玄弥 『心理学応用 英単語一度読んだら忘れない』
 総合評価: ★★★★☆
 対象としている年齢層が不明だが、面白く読めるようにできている。ビミョーな絵も、愛嬌があって可愛い。ガンガン暗記するというよりは読み物として。
 読了日: 2010年08月09日

No:20100808
 永井 均 『子どものための哲学』 講談社現代新書
 総合評価: ★☆☆☆☆
 著者の子供ころの体験を通して語られる独我論を大変興味深く読んだ。。 考えることが哲学なのはわかるが、何がしかの結論や成果を出していかないと逐時的な発展が見込めず、自己満足に終わってしまう。「学問」が、そうしたもののままで良いのかという疑問が最後までのこつた。
 読了日: 2010年08月08日

No:20100807
 シュトルム 『みずうみ』 (新潮文庫)
 総合評価: ★★★★☆
 純粋な男女。運命や世間に抗おうともがくのはいつも男のほう。一生結婚せずに想い続け、机上に写真を飾り続けるような人生でも是とできた時代がかつてあった。 それもある意味で羨ましい。
 読了日: 2010年08月07日

No:20100806
 ダニエル キイス 『アルジャーノンに花束を』 (ダニエル・キイス文庫)
 総合評価: ★★★☆☆
 障害者の自我や天才の自我が果たしてこのようなものなのかどうか疑問が残る。もっとも、それは永遠に謎のままだが。 パン屋の従業員や成果をあげることに必死な研究者、人はみな強迫観念に縛られ ている。彼はそうした人間の世界を、障害者の時も天才の時も、その世界から一歩退いたところからしか見ることができなかった。結局、最初から最後まで彼は孤独だった。そのことが悲しく、とても切ない。
 読了日: 2010年08月06日

No:20100805
 小和田 三郎 『追跡!平成日本タブー大全 (2)』 (別冊宝島Real (068))
 総合評価: ★☆☆☆☆
 つまらない本。詰らないことをいかに大げさに、読者に大事なポイントに疑問を至らせることなく、自分が問題にしたいところだけに焦点を当てさせるか、そのワザを拾う程度の価値しかない本。 しかし一般教育を受けた人であるならば、そのやり方のセコさに呆れて読む気もしなくなる。この本で挙げられている問題にはそれ自体、問題が多いテーマばかりだと思うが、筆者はそれらの問題を取るに足らないつまらない問題でしかないように読者に感じさせてしまっている。
 読了日: 2010年08月05日

No:20100804
 都筑 卓司 『10歳からの相対性理論』 (ブルーバックス (B‐584))
 総合評価: ★★★★☆
 ハノさんの言う通り、どういうつもりで「10歳からの」とつけたのか疑問。「なぜ相対性理論が難しく感じてしまうのか」を語る中で、空間の歪みや同時性の問題の一端を逐語的に理解できるようにできている。アインシュタインの生涯を辿るようにして彼の功績と人間関係、そして限界を見ていく過程を大切にした本。ところどころに挟まれた挿絵も可愛く美しい。
 読了日: 2010年08月04日

No:20100803
 池谷 裕二 『記憶力を強くする』 (ブルーバックス)
 総合評価: ★★☆☆☆
 記憶に関する脳の「仕組み」について語った本であり、「強くする」ことについてはほとんど触れていない。根気強い繰り返しが重要だとか、脳に対してなるべく強い刺激が良いとか、何かと関連付けた刺激を与えると効果的だとか、コーヒーのカフェインが効くといったような、一般常識程度のことしか書いていない。 記憶の増強に効果的な方法や物質の話がやっと出てきたか と思えば、研究室レベルの話ばかりで実用には足りない。ブルーバックスにしては珍しくハズレ。 
 読了日: 2010年08月03日

No:20100802
 畑村 洋太郎 『直観でわかる数学』
 総合評価: ★★☆☆☆
 「はじめっからこう教えてくれればよかったのに」とは、どのような教え方をされても思うものなのだ。 実際、冒頭の三角関数についての説明はよく分からない。 あまり読者を期待させるような書き出しをするのはよろしくない。 しかし歩合計算の解説は解りやすくてよかった。
 読了日: 2010年08月02日



Home > dicdicの読書記録 > 2010年B(8月)

inserted by FC2 system